2011年04月17日(日)
【宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第三章 異星生命体(1)】
宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第三章 異星生命体(1)

■第三章 異星生命体

『連盟標準時問』の1日は地球時間で20時間であることが分かったので、彼らの夜のサイクルに至極簡単に慣れ、SLA(『宇宙研究室ノアの箱舟』)に乗船してから非常にたくさんのことを経験した第1日目が終わった夜は、ゆっくりと熟睡できた。

翌日、非常に対照的な環境の三つの異なるモジュールを見物に出かけた。
それぞれのモジュールの世界に入るには、移転室を通っていく。私達に適した気候と重力に調節された特殊なエアー・カーにアンジェラと一緒に座る。この透明なバブルにはミニ円盤も入り、私達の背後の天蓋の部分に取り付けられている。
おそらく、ミニ円盤の回路は非地球型の環壊では機能しないのだろう。ミニ円盤が同乗するのは『ツアーガイド』の務めがあるからだ。もっとも、大体は私のためで、アンジェラの方は異星の世界を熟知しているはずだ。

最初に入ったモジュールは硫黄の世界だ。
黄色と深紅の煙霧に覆われた広大な地域を通って行く。間欠泉があちこちで噴出しており、活火山もひとつある。重力2.7のこの世界の『住人』は蟹みたいな格好をした甲殻類で、岩石の多い地形のあちこちにできている割れ目を、素早い動きで出入りしている。
植物は、紫色っぽい色をした海綿状の物しか目にできない。ある場所で、甲殻類が奇妙な格好をした機械を使って、露天掘りみたいなことを忙しく行っている。その近くをゆっくりと進んでいくと、『蟹のようなもの』の中には私達に向かって手を振るのもいる。その2匹がホバーカーを爪で親しげに叩く。
私は体中が震えてしまった。観光に訪れるにはいい場所だが、こんなところに住む気にはとうていなれない。ミニ円盤が終始しゃべり続け、いろいろなデータを投げつけてくる間も、私達は『蟹のようなもの達』の生活様式や文化を示す展示館をいくつか通って行った。

次に訪れたモジュールは『急速冷凍』惑星の世界だ。
空は氷片の色のように緑色がかかった淡青色で、暗い所には驚くような虹の光のパターンが見え、昼間の『北極光』の感じも若干する。大半が氷と雪の極寒の世界だが、剥き出しの岩石の表面もあちこちにたくさん見え、様々な色の水晶の巨礫石が飛散している。地下の迷路もあちこちにあり、繁茂している菌類にたっぷりと覆われている。
巨大で毛羽立った北極熊みたいな『人々』が、あちこちに散らばっている水晶を集め、輸送し、処理をしている。彼ら『毛羽立ち人』は、動物のような手の指も含めて、何もかもが大きい。だが、彼らは非常に複雑な機械装置を使って水晶を粉砕したり、小さな断片を計器に嵌め込んでいる。
聞くところによると、これが彼らの主要技術輸出品だそうだが、私としては、どうせ買うならスイス製の腕時計のほうが良い。それは別として、菌を食べるこの『毛羽立ち人』や、メタンかアンモニアの大気を持つ重力1.9の彼らの世界が少し気に入った。

最後に訪れた3番目のモジュールは、汚い青色をした沼の惑星の世界だ。
背の高い木々に似たオレンジ色の成長物や紫色っぼい茂みがある。背景は不毛の山脈だ。『生命』はごつごつした山々から自分の『翼力』で移動してくる爬虫類と、蛙のような『泥を好む』両生類だ。
この感覚が繊細な2種類の生命が、塩素を主とする世界で非常に平和に共存している。実際のところ、この2種類の生命体は補完的な形で協力して、気体や液体の各種の化学物質を生産しているのだ。そして、その大半が輸出用だ。彼らが共同して建造した化学工場は工学の奇跡だ。絡み合った共生の歴史を通じて、彼らが協調して成した技術・文化的偉業の数々には驚かされる。
爬虫類の『軽快さ』と両生類の『のろさ」という、相対立する性格を考えると、まったくの奇跡としか言いようがない。だが、彼らには共に工学技術に対する大いなる情熱がある。奇妙なことだが、『疑似蛙』の願望の方が強く、それが大きな牽引力となったからこそ、この2種類の生命体は宇宙旅行を開発したのであった。

 * * *

三つの世界のモジュールを見学し終える頃には、もう半日以上経ってしまっていた。頭は異星の印象で一杯で、はちきれんばかりだ。そこでミニ円盤を解放してやり、私達はアーガスの故郷の世界の空気呼吸型モジュールに出かけて、ゆったりと散歩をし、のんびりとピクニックを楽しみ、その後で前日と同じように愛の交歓をした。
二人の呼吸がぴったりと調和しているので、1日が経過するのが、まるで1年間のように感じられる。アンジェラも同じ気持ちで、私達二人はお互いのために創られたのだ、この二人の絆をもっと強くしよう、と言う。
絆を強くするための具体的な手段として、アンジェラは『マインド・リンキング(意思結合)』という方法を説明してくれた。そして一緒に経験したいと言う。これを使えば、相手の内面が実際どういう様子なのか直接知ることができ、二人が心の奥底から打ち解けて密接な関係になると言う。
私は大賛成だ。すでにアンジェラを非常に愛しているのだから。それだけでなく、宇宙の友人の世界や、彼らの物の考え方などを知ると同時に、自分の本心を知るのにも、これ以上良い方法があるだろうか?それに、アンジェラの方でも、私についての彼女個人の好奇心と、科学者としての好奇心の双方を一挙に満足させることも出来そうだ。

私達はまた出掛けた。今度は徒歩でSLAの前部の方に向かう。アンジェラが説明する。向かっているのは円錐頭の中のマインド・リンク・チェンバー(MLC/意思結合室)というところだ。
そこにはカーニバルの催し物会場のような4台の観覧車みたいな奇妙な機械が置いてあり、周囲にはサイケデリックな光のパターンが気が狂ったように揺れ動いている。この光の爆発を引き起こしているのは、円筒形の壁に埋め込まれた無数の人間の大きさの水晶からの反射光であり、また、物凄い勢いで流れているエネルギーで光り輝く、直径約10メートルの透明な中央シャフトからの反射光でもある。
ここは、SLAの端から端まで走っている大きな中央シャフトの一部が見えるところなのだ。おびただしい数のプラットフォームや環状モノレール、支持梁が、この幻覚をおぼえるような場所全体を縦横に走っている。

観覧車のゴンドラは半透明の四面体の形をしている。それぞれが前もって選ばれた一対の水晶製ピラミッド型タンク(底部の面積が約4メートル四方で、それに釣り合った高さがあり1人用)で構成されており、タンクの『底部と底部』が結合されていて、水平に置かれた軸で支えられている。つまり、マインド・リンクのパートナー同士は、ゴンドラ内部では『背中合わせ』に座っていることになるのだ。
酸素呼吸の人間類は即座に開始できるが、その他の種類の異星人は、自分達に適した気候に調節されているピラミッド型タンクに、既に密閉された状態でここに輸送されてくる。

マインド・リンクの実際のプロセスは、テレパシーによる浸透で促進されるが、これを引き起こすのが、動力を供給された中央シャフトと周囲を取り巻く水晶との間に生まれる静電気の場だ。こうして、お互いのマインドに入り込むこと(というより、一種の『霊的交わり』)によってお互いが相手の存在の本質を知ることができるのだ。そうすると、すでに意識が高まった状態が更に高まり、次の動的な段階によって鮮明になる。
動的な段階では、マインド・リンクを行っているペア毎の振動の特徴の組み合わせにすでに調節・同期されている周囲の水晶集合体の中を、変調電流が急速に回転する。(電流を回転させる方が、観覧車自体を物理的にぎこちなく回転させるより良い。)この動的段階の助けを借りて、パートナーは、お互いの経歴や特定の知識分野を具体的な細部に至るまで学ぶことができるのだ。

4台の観覧車のそれぞれに関して、電流を個別に切ることもできるし、各搭乗プラットフォームを適切なシールドで密閉することもできる。各観覧車は最高200個の四面体のゴンドラを収容することができる。
MLCを行う場合、各参加者はセッションとセッションの間に、一般的には、最低1日の聞隔を置かなければならない。これは、新しい印象を消化する時間が必要だからだ。

最初の観覧車は、試験用の『マインド・タッチ(意思接触)』専用で、1ラウンドが3分間。これで、パートナーについて簡単な全体的印象を得る。1ラウンド終了すると、参加者を収容しているピラミッドは場所を変えて、新たな組み合わせを作る。こうして5ラウンド回転するとセッションが終わる。

2基目の観覧車は『マインド・プローブ(意思探究)』用でセッションは1時間。お互いを深く探究し、深く知るようになる。
3基目の観覧車は『マインド・フュージョン(意思融合)』用で一セッションが20時間続く。この間にパートナーは切っても切れないシャム双生児みたいになる。お互いの人格に無限に溶け込み、お互いの間に隠し事が何もない状態になるからだ。
4基目の観覧車は、いわば国連式の多種マインド会議に使われ、即座に全体との念波通信が行われる。宇宙全体にとって重要な各種問題を熟慮するのに使い、セッションの長さは全員の同意によって決められる。会議参加者はSLA内のそれぞれの故郷のモジュールと常につながっており、コンセンサスが生まれつつあるときは、それについて要約されたフィードバックをMLCのコンピュータから定期的に受ける。

アンジェラと私は『マインド・プローブ』の観覧車に乗った。それからの1時間は、1時間というより1年間に思えたが、アンジェラの人生と世界について驚く程たくさんの知識を得た。一方、私の方でもアンジェラが私の『存在』に入り込み、私について知識を得るのが感じられた。彼女とひとつになれて私は非常に嬉しかった。たとえ、それがたった1時間のことであってもだ。
これまでに出会った中で一番相性がよい人との完壁な合体だ。また、その人と深く相思相愛の仲であるということも疑いのない事実だった。感情面での強い衝撃は別にしても、100時間語り合っても知ることができない程たくさんのことを、彼女の人生と世界について知ることができた。
彼女の一部となり、(私にとっては)いろいろな素晴らしい未知の場所で、彼女が人生の節目節目で経験してきたさまざまな出来事を私が再体験し、『連盟』の宇宙社会の生活様式や構造についての知識分野をいくつか想起するのは、大変におもしろいことだった。20世紀後半の惑星地球全体の社会・経済構造が複雑に見えるとするなら、『連盟』のそれは、その100万倍も複雑だ。
私にとっては、ほんの少し垣間見ただけでも言語に絶するほどの驚きだ、と言うだけで十分だ。その説明だけで何冊もの本が書けるくらいだ。どこから書き始めたら良いのかが分かればの話だが。

部屋に戻ると私はフラフラで、完全に疲れ果てていて、ベッドに倒れ込むと翌朝までぐっすりと眠り込んでしまった。
倦アく

第二章 宇宙船







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