2011年04月16日(土)
【宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第二章 宇宙船(3)】
宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第二章 宇宙船(3)

「ここで起きたことはすべて前もって仕組まれたことなのか?何もかも、君達宇宙人がいろいろな状況下でこの私を調べたいということの一部に過ぎなかったのか?私はモルモットのように操られているだけなのか?」
突然、私はまったく恥ずかしくなり、意気消沈してしまった。アンジェラは私を抱き締め、情熱的にキスをし始める。
「お願い。早まった断定をしないで。貴方を調べたり評価したりすることについて本来の意図がどうであったにしろ、そんなことどうでも良いと思うの。確かに、私は何千人という宇宙人の女性から慎重に選び出されたわ。貴方にぴったしということでね。貴方の心を開くためだったの。
でも、私は心底、貴方に『恋してしまった』の。ずっと前からだわ。貴方のことを記録ファイルで研究している間にね。貴方と愛の交歓をするのも夢に描いていたわ。まさにこの場所で、この地下の池でよ。その夢の精神投影に、貴方が円盤の母船に乗っているときに感応したに違いないわ。
信じて頂だい。貴方がここに来て下さって、私、一人の人間として本当に嬉しいの。科学者として一言うなら、魚の件にしてもジャガーの件にしても、貴方のスピード、運動機能、力強さには惚れ惚れするわ。あんなにすごいの見たこと無いわ」
「ああ、あれは大したことないさ。まあ、得意な分野には違いないけど、まだまだ上には上がいるさ」
「私にとっては貴方以上の人はいないわ」
彼女が囁くような声で言う。
「つまり、これ以上、望むところの無い最高の一括取り引きということだけど。いつまでも貴方と一緒にいたいくらいだわ」
私にしても同じ気持ちだ。だがそれは口に出さないで、アンジェラに熱烈なキスをし始めた。すると彼女はそれを押し止め、ここは切り上げて、私にはそれが何処にあるのか分からないが、『べース』に戻ろうと言う。
彼女が、てきぱきと手際よく、小型の『ホバー』コンテナに一切合切を詰め込むと、ミニ円盤がやって来てコンテナを引っ張っていく。それを見送るとアンジェラと私は一緒に歩きだした。

 * * *

私達は球形の『応接』室に戻った。ソファの上にズボンが置いてある。ボロボロになってしまったズボンを脱ぎ、履き変える。アーガスはいなかったが、飲食物がたくさん置いてあったので、勝手に飲み食いをする。アンジェラの話だと、飲食物はすべて合成だが栄養があるという。いろいろな形状に作られていて、本物に似せてある。
飲み食いする間、ミ二円盤が、私達が乗っている巨大字宙船について長々と説明をしてくれる。ミニ円盤は、図解が必要になると、ドームの一区画にたくさん嵌め込まれている大きなテレビスクリーンのひとつに、適当なスケッチを映し出す。

「貴方がお乗りになっているのは、中規模の『宇宙研究室ノアの箱舟』(連邦登録番号SLA8701)です。円筒形をしており、複数の種(しゅ)からなる乗組員と科学者達が搭乗しています。総員3000人です。葉巻の形をしたこの構造物は、長さが約2.4キロあります。(各セクションがそれ自体巨大円盤で、独自に航行可能な)十八の『重ねられた』セクションで構成され、それが結合した形になっています。
この規模の集合体ですと、最大33のセクションを『積み重ねる』ことが出来ますが、複数の一般サービス・モジュールと円錐頭の指令モジュールは勘定に入っていません。それぞれの円盤部分(モジュール)は、その故郷の惑屋環境を細心の注意を払って配置した、ミニ複製となっています。
本船を構成している惑星環境は、私達の『連盟』(つまり『自由世界次元間連盟』)が探査している幾多の非ヒューマノイド世界の諸文明から無作為に選び出した標本です」

「この『宇宙研究室ノアの箱舟』は文字通りの移動展示船、12の異なる世界を納めた宇宙ショーケースといえます。それ以外に相互を連絡しているサービス・モジュールがついています。各『世界展示』モジュールには、その故郷の惑星の最も代表的な地理的特徴、植物相と動物相、さらには歴史・文化などが展示されており、他の世界からの訪問者に開放されています。訪問するときには、必要とあらば適切な保護装置を身につけます」

「各モジュールの中心部は密閉されていて、そこに行くには、中心部の『トーラス環』の業務用回廊から移転室を通っていきます。そうした回廊と連絡通路はすべて、酸素呼吸型人間の環境に合わせてあります。それは、このSLA(『宇宙研究室ノアの箱舟』)を運行しているのが400人の人間型の乗組員であること、それに『連盟』所属のヒューマノイド型の科学者が200人乗船しているからです。各モジュールは完全に独立しており、それぞれの『故郷の』100人からなる乗組員が世話をしています。
更に、『故郷の』科学者が百人づつ乗っています。塩素呼吸型もいればメタン呼吸型もいますし、火のように熱い環境や氷のように冷たい環境出身もいます。故郷の惑星の重力もまちまちです。彼ら非ヒューマノイド型『現地生物』には、水生類、両生類、甲殻類、爬虫類、哺乳類、鳥類、大型昆虫類、各種の多足類など、いろんな可能性があります」

「各モジュールは、それぞれの惑星が建造しますが、『連盟』SLAの集合体と連結できるように、要請された規格に従って造られています。その目的は、ヒューマノイドであれ非ヒューマノイドであれ、お互いの世界を学ぶための施設を提供することにあります。この出し物で『旅に出ている』問に、お互いの生活様式を探究できますし、他の世界に立ち寄って調査することもできます。
SLAは銀河系間旅行も次元間旅行もできるのです。また、どの惑星の大気圏にも入ることができます。それだけでなく、水中『着陸』すらできるんです。その場合は、大体が連結解除モードで、つまりモジュールごとに別れて行います」

「『連盟』が物理的に接触したことのある異星の知性は何千種にも昇りますが、その4分の3とは意思の疎通が完全に不可能です。それほど異種だということです。残りの四分の一とても、意思の疎通はひどく不十分です。したがって、人間種にとって、まったく異質の知性が何を考え、どういう行動をとるのかを推測するのは極めて難しいことです。
ですから、明らかにこのことが、種間貿易や交流を行うのに深刻な障害となっています。『連盟』が他種と意を通じようとするそのやり方は、もっぱら人間の論理と経験に基づいています。しぱらくの間は、他の思考枠組みを使おうにも、そうしたものが無かったのですが、この『種間連絡船』SLAという方法ができてからは、お互いの生活や行動思考様式がもっと分かるようになりました。しかも、本船に搭載している特別な『一対一の意思連結装置によって、今や、どのような異星の生活様式であれ、その目立つ要因のほとんどすべてを知ることができます。こうして得た新しい情報は翻訳されて、コンピュータ・データ・インターフェイスに使えますし、最終的には普遍的な相互参照事業にも結びつけられます。
このように、『連盟』は前よりも少し賢い方法で異星の生命形態に対処できるのです。こうしたことが行われているのには、良い理由があります。つまり、全宇宙的協力と平和的共存のためなのです。長期的に見れば、誰しもが恩恵を受けることです」

 * * *

このような図解付き講義を『応接』室で受けてから、私達はSLAのオリエンテーション・ツアーに出かけた。バブル・カーにアンジェラと一緒に座り、通路や横道や回廊からなる迷路を音も無く滑走していく。ミニ円盤が先導しながら、だらだらと絶え間なくデータをしゃべり続ける。
しばらくすると、おせっかいなミニ円盤の説明が耳につきだしたので、それを馬耳東風と聞き流し、アンジェラの手を握っていることに意識を集中した。だが、SLAの圧倒するような規模には深く感銘せざるをえなかった。細部に至るまで素晴らしく優れたできばえには目を見張った。理解できないまでに進んだ技術を物語るものだ。

食料工場になっている区画を通っていく。そこには、ハイドロポニック槽のシステムがたくさん並び、蛋自質生産の生化学装置があり、各種の食品加工・合成の小工場もある。小工場からは無数の連結パイプラインが出ていて、多種多様のヒューマノイドや『ゲストとして搭乗している種』の需要を満たしている。この圧倒されるような迷路全体が、完全自動に近い状態で機能している。『気違い科学者』みたいな人聞型がほんの数人、監督しているだけだ。

食料工場と同じく、修理工場も、その巨大な機械類と手に負えない複雑さで、私にとっては仰天するほど不可解な代物だ。機械工学について私が知っている基礎知識をもってしても、ミニ円盤の余りにも細かすぎる説明を聞いても、全然理解の助けにならない。多肢機械工を目にしても大して役立たない。多肢機械工、つまり、3本以上の腕と3本以上の足を持った人間というのは、驚く程新奇に映った。ミニ円盤の説明によると、通常の本数以上の手足は装甲作業着の一部であるか、あるいは、効率向上のためにバイオニックの手足を『単に継ぎ足したもの』であるという。

同じように異質のものであることに変わりは無いが、少なくとも後甲板にある『多種円盤』(マルチ・スピーシージ・ソーサー)用の区画のほうが、大いに私の興味を引いた。責任者は牧羊犬のような、直立した紳士で、その姿を見ていると墓掘り人を思いだす。悲しそうな表情をして、搭乗手続きを私の知らない言語で説明する。それをアンジェラが通訳してくれる。

『異種の』科学者が搭乗したい場合、まず、幅と高さがそれぞれ約3.6メートルの、六角形の密閉式水晶容器に入れられる。その容器内の環境と重力は、前もって入居者の故郷の諸条件に合わせてある。ここまでの準備は、その科学者に適したモジュールの中で行われる。
この準備ができたら、密閉された容器は船尾に運ばれ、他の六角形の容器と一緒に円盤の床の上に積み込まれ、円形状に蜂の巣を組み合わせたように並べられる。こうするのは、飛行中の『荷崩れ』を防ぐためと、円盤の透明な底から外が最大限見れるようにするためである。
どの容器にも入居科学者の故郷に固有の装置や記録機器がついており、SLAに搭乗している同僚や円盤と連絡をとるインターコムが設置されている。61メートルの特殊『多種円盤』は、50個もの容器を乗せることができ、しかも十分な床スペースを残せる。もちろん、それより小型やずっと大型の特殊円盤もある。これは、いくつかの部門が同時に直接研究を行いたい場合に使うためだ。同一のゲスト種から数名の科学者が惑星旅行に出かけることも時折ある。
以上でSLAのオリエンテーション・ツアーが終わった。

今日はこれでおしまいとして、私達はアンジェラの居住区に行く。感じの良い部屋がふた部屋に、キチネットとバスルームがついている。彼女のところに勝手に『引っ越し』て来ても歓迎されるな、と思う。大歓待されるというこの思いが気に入り、それから数時間というものは、私が知っている一番良い方法で彼女を幸せにしようと努めた。愛の交歓の合間に、アンジェラと私はいろいろな話をしたり、バハマ諸島の首都ナッソーのカジノで繰り広げられる華々しいフロアー・ショーの素晴らしいビデオを見て楽しんだりした。全体として、非常に充実した一日だった…。

第三章 異星生命体







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