2011年04月16日(土)
【宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第二章 宇宙船(2)】
宇宙の友人達「バズ・アンドリュース物語」/第二章 宇宙船(2)

どこまでも続く青空に太陽らしきものは何も見えない。だが、快適なのだが非常に暑い。そこで、すぐにシャツを脱ぐ。大分長く歩くことになりそうだ。
「ここでは距離は当てにはなりませんよ」
訊きもしないのに、ミニ円盤が教えてくれる。
「宇宙船内部に与えられた100メートル位の範囲で、光学ホログラムを使って広大な広がりのある感じを作り出しているのです。周囲の広がりは数キロ位あるように見えますが、実際にはせいぜい幅150メートル程、高さ45メートル程の空間に過ぎません。風景の細かい部分は本当に本物です。これは、貴方の感覚全体が騙されていることを償っても余りある位、正真正銘の本物です。すべてがホログラムかもしれませんが、少なくともほぼ完壁に近いものです」

本当に感心した。
細心の注意を払って敷設されている小道は、一か所と同じ形のない地形を通っており、時には逆戻りするかのようになったり、限りなく円形に近い状態に走っていたりする。本物の低木の植え込みや小さな森、岩石層が小道の両側に並んでいる。
空き地を通りすぎて茂みに入ると、小道は幅11メートル位の回廊(だと後で知らされたもの)の内部を走っている。回廊は、まったく実物そっくりのディズニーランドのように整えられている。前方と後方との間にはホログラムの投影物がたくさんあり、それで綿密さが増している。その結果、全体的に素晴らしい環境が生まれている。暫くすると、もはやこれが幻影であろうとなかろうと、そんなことどうでもよくなって、ただただ楽しく過ごした。本当にすばらしく感じられたのだ!

30分程歩くと広い空き地に出た。その中に澄みきった水をたたえた池がある。向こう側には滝があり、水を池にほとばしらせている。この大きな池の水は、私のいる反対側の岩壁にある半分水中に沈んだ数個の穴にゆっくりと吸い込まれていってるようだ。
滝の近くで、現地人の女性が一人、花輸を作っているのが目に入った。私が近づくと、その女はさっと立ち上がる。眩い笑みを浮かべながら、ハワイの習慣にあるように、花輸を首にかけてくれた。
上品なサロン(腰布)を身に纏い、自い花を一輸、長い流れるようなブルーネットの髪に差し、はっとするような美しい娘だ。白人系アメリカ人の血をひいている感じだ。お互いの頬にキスをして挨拶を交わした後も、私は彼女をしっかりと抱きしめながら、自分の名前を囁いた。馬鹿みたいなロマンチストである私は彼女に一目惚れしてしまった。前に一度も会ったことがないことは分かっている。だが、どういう訳だか初めて会った感じがまったくしない。

「私はアンジェラよ」
恥ずかしそうに笑いながら私の腕をやっとすり抜けて、そう言うと、手をさっと振ってミニ円盤を追いやる。
「私と一緒にピクニックなさる?」
「喜んで」
そう応えて、辺りにおいてあるピクニック用具に目をやる。小さなキャンプファイヤーが燃えており、近くには空のフライパンが置いてある。
「何を食べるんだい?」
「魚よ……。貴方に捕まえられたらね」
そう言ってから、かなり原始的なやすを手渡す。
「動きが速すぎて私には無理なの」
私は花輪を首からはずし、靴を脱ぎ、ズボンをたくし上げ、やすを構えて浅瀬に入っていった。
魚はたくさんいる。大方は大きくて丸いサンフィッシュだ。金色をしている。素早い動きで巧みに突きをかわす。そこで、立ったままじっと動かずに待つ。1分もしないうちに側を大きな群れが注意深く泳いで行く。タイミングを十分に見計らって、太った魚にグイッとやすを突き出す。1.4キロ位はあるだろう。
「早いわね!」
アンジェラが感心しているのが分かる。私は軽く受け流そうとした。
「こんなの、トレーニング・キャンプの生き残り訓練の基礎だよ……。いろんなスポーツのキャンプでやるやつさ」
私が魚を捌きフライにする間、彼女はお皿や食器を毛布の上に並べ、二つのグラスに冷やしたワインを注ぐ。ワインはおいしいクラレットだが、瓶にはラベルが付いてない。確かに彼女は十分な準備をしてきている。
「この辺りに住んでるの?」
と訊いてみたが、すぐ何て馬鹿な質問をしたんだと気付いた。現実の熱帯の島にいるのではないことを忘れてしまっている。
だが、彼女は笑ってこう答える。
「いいえ、私も貴方と同じようにここを訪問しているんです。貴方は、地球から来た新しいグループの一人でしょう。習熟旅行に来たばかりの。私は地球からではなく、遠くの銀河系の別の世界から来たの。ここには仕事で来たのよ。その仕事の一部は、地球に派遣されたらいつでも地球生まれの人間として通用する技術を身に付けることなの。地球では、カリフォルニア出身という振れ込みよ。念の為言っておきますとね」
本当に騙されてしまうところだ!彼女が異星人、その言葉が実際に何を意味するとしても、『エイリアン』だとは信じ難い。完壁な地球人振りを誉めようとしたそのとき、何かがこの牧歌的なシーンを荒々しくぶち壊した。

何かガサガサと動く音が空き地の端から聞こえた。かと思うと、突然、ジャガーみたいな動物が現れた。私達の近くの、高さ6メートルの岩が露出しているところの上だ。もったりとした獣だ。明らかに、後ろから追いかけてくる何者かから逃げようとする途中で、逃げ道を私達が邪魔しているので怒り狂っている様子だ。ぞっとさせるようなシューツと言う声を出しながら、アンジェラに向かって飛び掛かった。
「この、パーティー潰しの、馬鹿野郎!」
大声で罵りながら、アンジェラを横に突き飛ばし、ジャガーの襲撃の方向に身を投げ出した。ジャガーが着地したのは、アンジェラと私の間で、わずか数センチしか余裕が無い。待ってましたとばかり両手でジャガーの首の端を何とか掴み、そのまま弾みをつけて、びっくり仰天しているジャガーの背に飛び乗る。腹を両脚で締めつけ、両手を前脚の『脇の下』に深く差し入れ、しがみついた。この方法を教えてくれたのは、カウボーイをやめてサーカスに入った南米のインディオだ。
「見てくれ、母さん、全然噛まれてないぞ!」
私はニヤッとした。ジャガーの牙と爪が私の体に触れないように出来たので、大いにほっとしたのだ。猛り狂ったジャガーは暴れに暴れ、地面を転げ回り、私を振り落とそうとする。と、ジャガーの体内が痙撃し突然グニャリとなった。アンジェラが立って私とジャガーを見下ろしている。手にはピストルみたいなものを握っている。

「もう大丈夫よ。眠らせたから」
「この間抜けの獣を殺してしまうとでも思ったの?」
意識を失い、どっしりと重いジャガーの体の下から這い出て、立ち上がりながら訊いた。背中と両脇に引っ掻き傷が何か所かあり、そこから少し血が流れている。ズボンもぼろぼろだ。ジャガーが私の体ごと、小枝や砂利の上をのたうち回ったからだ。
「違うわよ、お馬鹿さんね。貴方が殺されてしまうんではないかと、心配だったのよ」
そう言う彼女の声が震えている。
突然、低空飛行してくるホバー『トラック』が視野に飛び込んで来た。私達の近くで止まると、男が二人降りてくる。レンジャーみたいな格好だ。身動きしないジャガーを、黙々と引きずって荷台に乗せ、間もなく去って行った。

ミニ円盤が現れ、あれは動物園から逃げ出したジャガーだ、と教えてくれた。
「お助け出来なくて済みませんでした。でも、よほどの緊急事態でない限り、介入してはいけない、という指示を受けていたものですから」
「いやー、まったく、大助かりだ!ありがとさんよ」
肩をすくめてこう言い、ミニ円盤に退散しろと言うと、円盤は素直に消え去っていく。今のは仕組まれたテストだったのだろうか?という疑問がちらっと心を過ぎった。
「さて、体を洗ったほうがいいな」
サッと裸になると、池の深いところに向かって飛び込む。ちょっとためらってから、アンジェラも着ているものを脱ぎ、池に突き出ている岩のほうに歩いていく。何て素晴らしい裸体なんだ!

アンジェラが優雅に池に飛び込む。それから、反対側の岩壁にある半分水中に隠れた空洞の中を泳いでいき、見えなくなった。私も後に続く。体がやっと通れるくらいの『青い岩屋』のような地下の運河を通り抜け、地下の池の浅瀬に出た。
頭上の割れ目から入ってくる一条の光線の中に、アンジェラは両手両足を伸ばして、魅惑的な姿態を横たえている。つるつると滑りそうな石板の上だ。彼女の足元で水からあがり、熱い空気の中に立ち上がる。男性自身が勃起して大きくなっている。と、突然、気が付いた。そうだ、まさにこのシナリオは、すでに何度も経験していたのだ。あの円盤の母船でみた夢だ。そうか、正夢だったのか。幻想ではなかったのだ。
夢の中とまったく同じだ。アンジェラは、興奮した男性自身を見て小さな喜びの声を出しそうになり、それを押し殺した。そして、上半身を起こそうとして滑ってしまい、私の腕の中に倒れ込んできた。しかも勃起した男性自身の真上にだ。私達は思う存分に愛の交歓をした。大分経ってから、またお互いを求めあう。優しく、探し求めるように。奔放なセックスの幻想が現実になったことがなかなかぴんとこない。悦惚とした幸福感があった。


その後、アンジェラが強く言うので池に戻り、ピクニックしていた場所へと帰っていった。彼女の指示に従い横になると、医療キットから探しだした物質で傷の手当てをしてくれる。動きはプロのようだ。
「君は医者か何かなの?」
疑問を抑えきれずに訊いてみた。
「ええ、そうよ。私はドクター・アンジェラ・モーニングスターです。貴方を担当する案内役でもあるわ。何でも用事を言いつけてくださいね」
「今までのところは素晴らしい勤務ぶりだよ。ありがとう」
と言ってから、突然、口をつぐんだ。いろいろな意味合いに気が付いたのだ。
倦アく







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