2010年10月24日(日)
【宇宙の友人達〜オスカー・マゴッチ氏の体験〜第五章 世界旅行(3)】
宇宙の友人達〜オスカー・マゴッチ氏の体験〜第五章 世界旅行(3)

明らかに中東での用件を終えた円盤は、何処か別のところへと向かった。
例の球体を覗き込むと、予定進路が何とか見えた。アジアの奥深いところを指している。ヒマラヤ山脈のど真ん中だ。チベットに向かっている!
目的地は、その地域の全般的な地形から推測した。地図には国境も示されていないし、名称も書き込まれていないのだ。一体全体、何のためにチベットくんだりまで行くのか?
朧げながらも、チベットは中華人民共和国の中にあることを思い出した。でも、あんなひどい環境の、凍った山脈では、中国人はおろか誰にも出会いはしないだろう。こんなことを考えながらも、飛行はずーっと楽しく、私の目は、円窓、特に床の円窓に張り付いたままだった。

地形は確かにごつごつしていて、起伏が多い。砂漠や不毛の山並みだが、それこそキャラバン隊や軍隊が古代から使ってきたに違いない道も見える。
肥沃な低地をしぱらく横切ると、間もなく、山頂が雪で覆われたヒマラヤ山脈の山並みに入った。
人間が住んでいる兆候はだんだんと少なくなって、ついにはそれも消えてしまった。飛行高度は、非常に高い峰々からそれほど上空ではない。太陽は、背後にかなり落ちていて、陰は眼下の渓谷をすでに暗くしている。

その時、円盤は浮遊しながら止まった。下には、これといって注目に値するものは何も見えない。ただ、ごつごつした山腹が続いていて、至る所に雪がたくさん見えるだけだ。太陽は、地平線に没しようとしている。そこで、私たちは降下を始め、薄暗い黄昏に包まれて着陸した。峰の線より遥か下のほうである。
明らかに、着陸したところは、見上げるような山腹の湾曲部をなしている岩棚だった。300メートルも離れたところにもごつごつとした山が大きく不気味に見える。その山頂の一部は雲に隠れている。前を見ると、疲なしの谷だ。まったく人里を離れたところだ。

時が経っていく。外は、刻々と暗さを増している。何を待っているのだろう?
その答は間もなく分かった。湾曲部の向こう側から、奇妙な行列が目に入ってきた。松明を掲げた多分10人ぐらいの人間の姿が一列縦隊になって、真っ直ぐこちらに向かって来る。彼らは毛皮の冬服を着ている。
それから、大変驚くことが起きた!行列が、数メートル離れた地点で止まり、儀仗兵のように並ぶと、円盤がドアを開け、タラップを降ろしたのだ!

松明を持っていない人影が、こちらに歩いてきた。出入り口に頭を突っ込み、毛皮の衣類の束を私の足元に向かって投げてよこした。チベット僧のようだ。思い直してみると残りの者もやはりチベット僧のように見える。彼は、衣類を身につけてから自分についてこい、と動作で示している。
もう、どうでもいいや!私は捕虜になるのか?それとも、ここは異星人の墓地なのか? あるいは、何なのだろう?

言うまでもなく、ここに着陸したことも、あのような出迎えを受けたことも、すべて予定されていたことだったのだ。こうなったら、指示に従うしかない。
そこで、毛皮の衣類を着、帽子を被り、ブーツも履いた。体内でゾクゾクッとする興奮の気持ちが徐々に涌き上がってくるのが感じられる。
これは、第一級の、信じられないほどの冒険だ。UFOの秘密について、坊さんたちが知っていることを全部喋らせてしまうのに、またとない絶好の機会だ。

ついて来い、と身振りで示す坊さんの後に続いて、急速冷凍機のように感じられる外へと足を踏み出した。上空では風が凄じいうなり声を上げ、渓谷を半分消してしまっているごつごつした雲の上に更に雲を運んでいる。
何てひどいところだ。体を引き裂かんぱかりの突風が吹き、松明が吹き消されそうになる。そうした中を、岩棚に沿ってのろのろと歩き始めた。カーブを周りながら、後ろを振り返ると、円盤はだだじっと鎮座している。微かに光っているが、タラップはしまわれ、ドアも閉じている・・・。

曲がりくねった、ますます細くなる道を数分歩くと、トンネルに入った。そこを歩いていくと、山の内部の、松明に照らされた大きな部屋に出る。地下にある、チベット僧院か何かの中にいる感じだ。動作で促されて、厚手の衣類を脱いで、灰色の上っ張りを身につけた。そこで、チベット人らしい老僧の出迎えを受けた。
黄色い僧衣を着た老僧は、仰々しい挨拶を動作でしたが、一言も発しない。老僧は、先に立って石の階段を上り、古めかしいドアを通って、もうひとつの部屋へと私を案内してくれた。

この部屋は、蟷燭の灯で明るくした会議室みたいだ。12人の老僧が異なった色の僧衣を着て、木の床の上に結跡朕座で座っている。彼らは半円形を作っていて、その前には高座がある。一つの椅子には非常に高齢の老僧が座っている。彼の反対側の椅子は空席だ。
不思議なことに、彼らの中には、東洋人のほかに、白人も黒人も大分いる。普通のチベット僧院の光景とは趣を異にしている。私は、空席になっている椅子に座らされた。誘導してきた老僧は私に、黙ったままでいるように、と動作で示した。
私は誰かが話し出すのを待っていた。が、沈黙は破られない。ただ、時折、読経のようなはっきりとしないつぶやきが聞こえるだけだ。誰も私に特に注意を払ってはいないが、それでも、つぶさに観察されているという不気味な感じがしてならない。

この沈黙のもてなしは、何時間も続いた。やっと、例の最長老格の老僧が立ち上がり、温かな微笑みを私に向けて頷いた。そして、他の老僧を従えて、出ていってしまった。私一人だけが残された。
一時間位であったろうか。奇妙なことだが、苛々も感じず、安らかな気分だ。浜辺で何もしないでただ時間を過ごしているかの感じである。それに、待つしかすることが無いのも分かってたし、別に急ぐ用事もないし・・・。

若い僧が入ってきて、私の近くにお盆を置いた。その上には、茶とパンが幾つかと干しイチジクがのっていた。話をしようとしたが、その若い僧はただ頭を振るだけだ。仕方なく諦めて、出されたものを食べた。その後で、最初に私を案内してくれた老僧が戻ってきて、今度は迷路のような廊下を先導していく。
着いたところは、天井がアーチ形の大広間だ。そこは、少なくとも100人の、ありとあらゆる人種や体色の僧で一杯だ。僧たちは薄い金色の僧衣を着ている。一人残らず、木の床に結跡蹉座で座っている。周囲には大量の蟻燭や線香が燃えていて、広間の空気は息も出来ないほどだ。

私はまた高座に座らされた。二つ空いている椅子のひとつにだ。暫くすると、ゴングが鳴り響き、例の「会議室」で会った長老格の老僧が儀式張って歩いて入ってきて、もう一つの椅子に座を占めた。
この老僧は、最もチベット人らしく無い恰好の僧で一杯のこのチベット僧院の、いわゆるラマ教の高僧なのだろう。この僧たちはどうやってここに来たのだろう?こんな異常な環境で、何をしているのだろうか?
読経が始まり、僧院がその声で満たされる。100の喉から出てくる厳粛なまでにゆっくりとしたリズムに、時折、ガラガラとなる楽器とゴングの音がはさまる。こうした読経が極めて心地よい感じで、何時間も続いた。

暫くすると、自分の体が空中に浮遊するのが感じられ、心の中が、喜びに満ちたようにうずうずとした感覚に、完全に洗われる気がした。その後では、有り得ないことすら目撃した。軽度の幻覚によるものかもしれない。
例のラマ教の高僧の体がゆっくりと空中に浮き、支えも無いと思われるのに、空中に留まっている。その間、僧院の壁の一つがだんだんと消え去って、オレンジ色っぼい色の脈動する円盤が見える。それが、広々とした渓谷の上を浮遊している・・・。

私は寒けを感じた。突然気が付いたのだが、私は外にいた。
渓谷を見渡す小さなテラスに立っていたのだ。円盤は空中に浮いている。どうやって、いつ外に出たのかは分からないが、毛皮の防寒着を着ていないので、凍えるほど寒い。
例のラマ教の高僧が私の傍らに立っている。私と同じように軽装だが、まったく寒さを感じていないようだ。高僧は、両手を挙げて、雪に覆われた頂きに顔を向けている。その頂が、日の出の最初の光に触られて、眩しいばかりのオレンジ色にパッと燃えあがった。ラマ僧の側に控えた僧が、物凄く長い木製のホルンを吹く。その不思議な響きが、大分長い間こだまし続ける。

ラマ教の高僧の身振りに促され、彼の後に続いて小さなドアを通っていくと、そこは天井がアーチ形をしたさっきの僧院だった。ガランとして、きれいだ。そこで、高僧は、あたかも祝福するかのように私の頭に一寸触れ、そして出ていった。また、一人になった。
このチベットでの不可思議な出来事を少しでも理解しようとした。言葉による意思の疎通がまったく無いのは何故だろう。ここでは、行動のほうが、一千語の言葉よりも大事なのかもしれない。そして、何か素晴らしいことが私に起こったに違いない。
私は今までに感じたことが無いほど強くまた活力に満ちているのを感じる。自分の存在全体が高度の状態へと変貌を遂げたのだ。言葉で表現出来ない状態へと。

案内役の老僧が入ってきて、私を最初の部屋に誘導する。そこで、老僧はまた防寒着を私に着させた。一群のこれまた防寒着を着た僧達が、私を、曲がりくねった道を通って、湾曲した岩棚に連れていってくれた。
そこに円盤が待っていた。私に付き添ってタラップを昇って来た一人の僧が、そこで待って、私から毛皮の防寒着を受け取る。それから、僧達は一列縦隊になって去っていった。後ろをちらっと振り向くことさえしなかった。

円盤は離陸すると、峰々より高く、早朝の光の中へと上昇していった。眼下には、僧院の形跡はまったく無く、何かの入り口を示すものさえも無い・・・。
倦アく







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